日本企业制度の変化について

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日本の雇用システム改革

516022番

宇賀神慶子

提出日2000年2月24日

はじめに

第1章これまでの日本型雇用システム(1)年功序列型賃金

(2)終身雇用制度

第2章これからの雇用システム

※能力主義賃金

(1)年俸制

(2)ストック?オプション制度

(3)早期退職優遇制度

(4)退職金前払い制度

第3章能力主義賃金のメリット?デメリット(1)メリット

(2)デメリット

おわりに

1

はじめに

私が、1社会人として自立しようとしている今、未だに不況と叫ばれ、企業を取り巻く環境は、日々変化しています。この変化の著しいビジネス社会の中で企業が生き残っていくには、企業を支える人材が十分に揃っているかにかかっているといえるでしょう。その人材を獲得し、定着させるためには、働く者の最も関心の高い労働条件である賃金制度の整備を欠かすことはできません。

日本の賃金制度が、従来の「年功賃金」に代わって、「能力主義賃金」への方向をますます強めています。これには、労働力の高齢化が進む中で、年功を重視する賃金制度では、人件費負担に耐え切れなくなってきていることと、人材を生かすためには、公正でやりがいのある賃金制度の構築が必要とされていることの現われではないでしょうか。そこで、賃金制度はどのように変わりつつあるのでしょうか。

第1章これまでの日本型雇用システム

日本を経済大国といわれるまでに成長させてきた、日本型経営システムの代表とされるのは、「年功序列型賃金」と「終身雇用制度」です。

(1)年功序列型賃金

年功序列型賃金について、必ずしもはっきりした定義はありませんが、ある程度共通した「年齢や勤続年数の増加とともに増加するような賃金」という概念があるように思われます。

賃金制度をみてみると、多くの企業が、直接的には、年齢と勤続年数だけで賃金は大きく上昇しませんが、年功で役職や資格が高まるという年功昇進があると、賃金が増加するので、結局、年齢と勤続年数で賃金が上昇することになりなす。

この賃金制度の大きな特徴として、「定期昇給制度」があります。定期昇給制度とは、毎年、一定の基準に基づいて昇給する「年齢給」「勤続給」などのことをいいます。これまでは、この定期昇給制度に支えられ、個人の能力?実力に関係なく、社員の年齢や勤続年数だけで一定割合の昇給が約束されているのです。

この年功賃金体系が確立したのは1946年のことです。戦後の厳しい経済環境下の時代に社員の生活安定を図るという観点から、賃金の3/4程が、年齢、家族数、勤続年数で定まるという仕組みでした。年功賃金体系に対する反省は、経済の安定した1950年代前半に始まりますが、現在に至るまで長期にわたって年功賃金が賃金管理の基本となってきたのには、いくつかの原因が考えられます。

1)年功賃金は賃金管理が容易であるということです。年齢、採用年次、学歴といった、誰の目にもあきらかな属人的要素を基準に人事管理をおこなえばよいからです。また、一見すると公正であるような印象も受けるのですが、能力賃賃金の場合、何らかの基準で公正に評価するのは容易ではありません。

2)年功賃金制度下で、長期間勤務するならば、若い時には賃金が低くてもいずれは年齢や勤続年数が高まって賃金が高まりますから、見方によれば、平等な賃金制度であると言えます。このように年功賃金は長期雇用を前提とする賃金制度で雇用管理が行なわれて

2

3 きました。

3) 年功賃金は社員の生活安定に効果があったことです。年齢が高まると賃金が上がるということですから、生活費の増加とともに賃金が上がるので、社員にとっての生活の安定につながったのです。

こうして続いてきた定期昇給は、今後、能力主義が採用されると、望めなくなります。各企業が定期昇給制度を見直しているのには、主に2つの理由があります。?社員の高齢化に伴って人件費コストも上昇するが、それを上回る会社の成長率が見込めない。?能力?実力で昇給に大きな格差がつかないため、社内での競争意識が生まれない。こうした理由から、企業が厳しい環境下で生き残る為に、「年齢給」の昇給幅を大幅に縮小し、能力?実力に基づいた「能力給」の昇給幅を拡大する企業が、現実に増えています。図表1の、上場企業約2000社を対象に実施したアンケート調査「日本的人事制度の現状と 課題」((財)社会経済生産性本部?平成10年2月)から読み取ることができる。

<図表 1 今後の賃金制度の方針>

(2) 終身雇用制度

現在、日本企業の雇用形態は、まだまだ終身雇用制度が一般的です。終身雇用制度には、社員に精神的安定感を与える、会社に対する帰属意識?忠誠心が高まる、ノウハウ?情報を組織内蓄積できる、安心して人材投資ができ、計画的な人材育成ができる、などのメリットから定着しているとみられる。しかし、その一方で、組織の高齢化に伴って人件費負担が大きくなる、高年齢になると職務と能力に開きが出来る、景気の変動に柔軟に対応できな2.120

2.6

30

42.9

20.8

16.8

3.2

17.6

42.6

1020304050全面的に能力主義

年功主義を最小限に能力主義を中心年功主義を残し能力主義を重視年功主義と能力主義と半々程度に年功主義中心%

管理職一般職

4 い、などのデメリット もあり、終身雇用制度の見直しが進んでいる。経済企画庁の調査結果(図表2)では、今後5年間の方針として「(どちらかといえば)長期継続性を前提としない 雇用」を考えている企業が、全体の43.8%と約半数を占めています。つまり、多くの企業が終身雇用(長期継続的雇用)の見直しを考えているのです。

<図表 2 雇用形態の変化>

9.353.746.941

38.85

4.40.

90

20406080100

今後5年間に重要性の高まる方針現在主流である方針長期継続的雇用

どちらかといえば長期継続的雇用

どちらかといえば長期継続的雇用を前提としない雇用

長期継続的雇用を前提としない雇用

5 第2章 これからの雇用システム

高齢化社会の到来などから、企業自体が年功序列型賃金や終身雇用制度を維持できなくなり、社員との長期雇用を前提とした関係では、企業としてなり立たない時代がきています。これまで、多くの企業では長時間労働を高く評価する傾向がみられました。しかし、どの企業でも労働時間短縮を進めざるを得なくなっています。働いた時間の量で評価することから、どんな業績を上げたかという業績で評価する賃金制度、すなわち能力主義賃金の必要性が高まってい ます。(図表 3 参照)

<図表 3 年功賃金と能力賃金>

※能力主義賃金

「社員の能力を基準として決める賃金」のことを、能力主義賃金といいます。

この能力には、研究開発のできる能力、顧客を新規開拓できる能力、来客に適切に対応できる能力、パソコンを使いこなす能力、などさまざまな種類があります。

こうしたさまざまな能力のことを、一般的には「保有能力」と呼んでいます。これに、本人の努力を加えたものを「発揮能力」と言い、売上や業績といった形で示されます。

保有能

+ 努力 = 発揮能力

保有能力に精神的?肉体的な努力が加わって、その結果として発揮能力が現れる、ということです。企業は、毎日の企業活動を通じて、自らの掲げる目標の達成に努めています。企業の目標としては、一般的には売上高や利益を最大化すること、また、企業イメージの向上や社会発展への貢献を掲げている企業もあります。企業は、企業目標達成のために社員を雇用しているので、社員の働きの評価とは、企業目標の達成にどれだけ貢献しているかということになります。能力主義賃金でいうところの「能力」とは、いわば「企業目標達成への貢献度」といえます。

年功賃金年齢?勤続年数賃金能力賃金

能力

賃金

すなわち、能力主義賃金での賃金を決める基準は、「企業活動貢献度(=能力)」と考えられます。

個々の社員は、本人が責任を持って処理しなければならない業務(担当業業務)、同僚を支援することにより同僚の業務が円滑にいくように協力する業務(同僚業務)、所属する組織が処理しなければならない業務(組織業務)への貢献をしています。このすべての業務が企業貢献度につながります。このように、個々の社員の働きは多面的で、個々の社員の企業活動貢献度の把握はなかなか容易ではありません。タクシーの運転者は、独立して業務を行なうこと、業務を遂行するのに同僚の協力が尐ないこと、集団業務への貢献が尐ないことから、企業活動貢献度を把握しやすいと言えます。このような職場では、成果で示される発揮能力で企業活動貢献度を測定します。しかし、多くの職場では、何人かのグループで仕事を行なうため、個人別に企業活動貢献度を把握するの困難なことです。このような職場の場合は、間接的に個々の社員の企業活動貢献度を把握します。それは、業務に関する知識?技術?技能の水準が高い者は、低い者よりも企業活動貢献度が高くなるであろうということ、通常の働きをしているかどうかを何らかの方法で確認することです。このように、個人別に企業活動貢献度を把握しにくい職場では、発揮能力に加えて、保有能力や努力についても十分な目配りが必要になります。

;副次的な把握項目

能力主義の賃金制度は、企業が「労働の対価」として、仕事の量?質に応じた賃金を社員に支払うための合理的な賃金制度です。(図表4参照)企業によって詳細は異なりますが、従来までの「年功型」賃金制度との大きな違いは、次の2点に集約されます。①年功型賃金制度の廃止?縮小?改善…昇給のピークとなる年齢の引き下げ、一定年齢以降の昇給ストップ、またはマイナス昇給など、年功型賃金金が大幅に見直される。②職務給の強化?新設…職務給の新設、もしくは基本給全体に対する割合のアップなど、仕事の内容を重視した賃金制度になる。

98年1月に経済企画庁が上場企業約2000社を対象に実施したアンケート調査『日本的経営システムの再考』によれば、9割以上の企業が今後5年間の方針として、「能力主義的処遇」への移行を考えている事を明らかにしています。(図表5参照)

ここでいう、「能力主義的処遇」の構成を見ると、(1)年俸制の導入、(2)ストック?オプション(自社株購入権)制度の導入、?早期退職優遇制度の導入、?抜擢?降格人事の実施、?専門職制などの複線型人事制度の導入などが代表されます。

そこで、?、?、?について見てみる。

(1)年俸制

能力主義のもとでは、年功型賃金に代わり、実績に応じて1年ごとに賃金が決定される

6

「年俸制」が主流になると考えられています。年俸制は、個人の業績に対する対価という考え方が基本にあるため、これまでの業績賞与以上に能力主義が強調されます。97年11月、財団法人社会経済生産性本部が上場企業約2000社を対象に実施したアンケート調査『日本的人事制度の現状と課題』

では、約2割の企業がすでに年俸制を導入しており、将来的に導入を考えている企業は、実に5割以上という結果になっています。(図表6参照)こうした調査結果を見ると、現在の厳しい経営環境などを考えた場合、能力主義の年俸制が急速に普及していくのは、明らかです。なぜなら、年俸制には、「高齢管理職賃金の抑制」「リストラの推進」「年功型賃金の排除」など、人件費コストの削減というメリットがあるからです。

また、ディスカウントストアで急成長を続けている「ドンキホーテ」では、年俸制ならぬ「半俸制」を採用しています。半年ごとに業績評価を行い、激しい変化に対応すると共に、社員の士気高揚に役立っています。

<年俸制導入のメリット>

?高業績高収入による社員の意欲向上

?経営者的意識を持った仕事への取り組み姿勢を強化

?社員の活性化をはかり、業績目標達成がはかれる

?年俸契約により、優秀な人材の確保が容易になる。

<年俸制導入のデメリット>

?収入の不安定さにより危機感が高まる。

?短期的な業績志向タイプの社員が多くなる。

結果重視の自己中心的な考え方を助長する。

7

<図表4仕事量と賃金のバランス>

8

9 <図表 5 処遇面での変革>

< 図表 6 年俸制の導入状況>

(2)ストック?オプション制度

能力主義の新しい動きとして注目されるのが、ストック?オプション制度(自社株購入権)に代表される「インセンティブ制度」です。インセンティブ制度とは、基本給や固定賞与などの他に、実績や成果に応じた業績給(報酬?報償)が支給される制度のことです。

従来は1年以下の業績?成果に基づき、特別賞与などが支給される短期型のインセンティブ給が主流でしたが、97年6月のストック?オプション制度の解禁に伴い、1年を越える長期型のインセンティブ給として、このストック?オプション制度を活用する企業が目立ち始めています。 ストック?オプション制度とは、役員や社員が自社の株式を事前に設定された価格(権利行使価格)で、一定期間(権利行使期間)に限り購入できるという制度です。つまり、自社の株が権利行使価格を上回った時に、権利行使価格で自社株を購入、売却すれば、その差額分(利益)が個人の報酬額になるというわけです。また、あくまでも権利なので、株価が下がれば権利を行使9.9

55.133.936.29.40.546.8

8.

2020406080100今後5年間の重要性が高まる方針

現在主流である方針%

年功主義的処遇

どちらかといえば年功主義的処遇

どちらかといえば能力主義的処遇能力主義的処遇

0.5

5.527.148.218.70102030405060無回答今後とも導入の予定はない

将来的に導入を考えている

具体的な計画?予定あり

すでに導入している

10 する必要はないので、損をすることもありません。報酬額が会社の株価に連動して決まるため、一般社員にも会社の業績アップを考える「経営意識」が尐なからず生まれてきます。(図表 7 参照)

<図表 7 ストップ?オプション制度の仕組み>

*権利付与…会社が役員や従業員に対して、将来株価が上昇した際に、 自社の株式をあらかじめ定めた安い価格(権利行使価格)で一定期間 に限り購入することができる権利(ストック?オプション)を付与する。

*株式公開…会社が成長し、株式を公開する。

*権利行使…役員?従業員は、権利行使価格よりも株価が高ければ、権

利を行使し、権利行使価格で自社株を取得できる。

*株式売却…役員?従業員は、株式を売却し、利益(キャピタルゲイン)を

得ることができる。

(3) 早期退職優遇制度

ここ数年、「早期退職優遇制度」を導入する企業が増え続けています。早期退職優遇制度とは、定年を待たずに退職を促すための制度で、希望者には退職金の増額、一定期間の有給休暇など通常の退職時とは異なる優遇処置が設けられています。この制度は、企業の合理化の一環としてのイメージが強いが、本来は、業績が悪化した企業が人員削減のために行う希望退職募集とは目的が異なる。希望退職募集は、退職者数の目標を定めて期限付きで行い、退職金を大幅に割増する制度である。これに対し、早期退職優遇制度は、企業側の事情よりもむしろ労働者個人として職業に関する生涯計画の選択肢のひとつとして利用される人事制度である。定年前の中途退職による経済的な不利益を補い、60歳以降の労働の機会を有効な時期に得ようとする労働者が、定年を待たずに退職する場合の生活設計の一助となるものである。中高年層に対する退職金機能を、足留め効果から退職促進効果へと変更させるものであり、実質的に0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

権利付与株式公開権利行使株式売却

時間株価 3000円

中高年層に対する雇用の流動化に対応したものと見ることができる。

退職金制度のある企業のうち、早期退職優遇制度を導入している企業数割合は3.4%にとどまっている。(図表8参照)しかし、企業規模別には、従業員数1000人以上の企業では3割を超えているほか、300~999人規模の企業でも2割弱と比較的導入率が高い。一方、中小企業ではほとんど導入が進んでいない。

退職金の優遇開始年齢は、45歳、50歳、55歳のいずれかとする企業が多く、社会経済生産性本部の調査によると制度適用開始年齢の平均は49歳、適用開始勤続年数の平均は15年となっている。(図表9参照)

<図表9早期退職優遇制度の開始年齢>

早期退職優遇制度における退職金の優遇措置としては、功労金など加算金を上乗せする方法を採用している企業や、定年や会社都合退職の場合と同水準の退職金を支給する企業が多い。具体的には、45歳、50歳時点では勤続年数を5~10年程度加算し、55歳時点では60歳定年時の額を支給する方法などがある。退職金水準を見ると、男性の標準労働者では、大学卒の45歳でモデル退職金(退職一時金と退職年金現価額の合計額)が915万円に対して、制度を適用した場合の加算額は657万円(加算割合は71.8%)で、退職金合計支給額は1572万円となる。もともと退職金は上昇とともに累進的に金額が増加していくため、逆に加算割合は年齢が高いほど低く、大学卒55歳では加算割合が同45歳の半分程度にとどまっている。(図表10参照)

11

12

<図表 10 早期退職優遇制度がある企業の退職金額> *高卒者

*大卒者

早期退職金優遇制度の問題点について、99年2月に社会経済生産性本部の行った「これからの退職金?企業年金の展望と課題」(図表 11 参照)の企業回答では、「特になし」とする企業が過半数であるものの、一方で「利用者が尐なく制度が機能しない」という問題点を指摘する企業が約4割を占めている。早期退職金優遇制度は、退職金の加算割合が利用状況に大きく響き、加算割合が高ければ利用者が増加するが、企業にとっては退職金支払コストが増えるととも に人材流出の懸念もある。逆に、加算割合が低いと、利用者が尐なく、制度の存在意義が薄れる。こうしたことから、退職金の加算割合をどう設定するかが、この制度の課題と言える。

<図表 11 早期退職金優遇制度の問題点>

(4) 退職金前払い制度

終身雇用の見直しに伴い、終身雇用の根底を支えていた退職金制度も変化しつつあります。

退職金制度は、①長期間の功労に対する報償、②賃金の後払い、③定年退職後の社会保障、

2.1

2.152.8

6.7

7.239

010

20

30

40

50

60その他

利用者が多く従業員の士気低下

優秀な人材の社外流出

退職金支払コスト増利用者が少ない特に問題ない%

といった日本特有の制度です。この退職金制度も不況などの社会情勢に呼応するかのように、新しい退職金制度ができました。その代表的のものが「退職金前払い制度」です。この制度は、退職金給与上乗せ制度とも呼ばれており、退職時の支給の代わりに毎月の給与や賞与に退職金を分割して上乗せする制度です。この制度により、労働と賃金を短期間で精算できるので、従来のように中途入退者の生涯退職金が著しく低いということはなくなります。また、企業としては、採用対象となる人材の幅が広がり、退職金コストの平準化を図ることができます。しかし、労

働者としては、早期に退職金分を受給することで、自己のニーズにあったことに用いたり、転職コストが軽減されるメリットがあるが、その半面、長期的な生活設計に自己責任を持つことや、退職後に備えて自分自身での資産運用?管理が必要になる。

近年、一部の企業で導入が始まっていて、従来の退職金制度と併用して従業員の選択制とする企業が多いが、一度全社員の退職金を精算して、全社員一律に導入する企業もある。松下電器産業はこの制度を採用しており、希望者に対して、退職金を年2回の賞与に上乗せして先払いするものです。(図表12参照)この新制度を98年4月から導入しており、98年度新卒採用者の44%が選択しています。

この制度の問題点について、99年2月の社会経済生産性本部の調査によると、「現行の税制や社会保障制度では離職時に支払う場合に比べて不利になる」が約7割と最も多く、この制度導入の大きな障害になっている。現行の税制では退職金にかかる所得税は勤続年数に応じて退職所得控除額が増加するようになっていたり、社会保障制度では社会保険料は毎月の給与や賞与をベースに労使半々で拠出していて、退職金は対象外になっている。このため、生涯賃金が同じだった場合には、退職金を給与に上乗せした方が所得税負担が大きくなる。すでにこの制度を導入している企業の中には、所得税格差を補填している企業もあるが、企業としては、制度導入により人件費負担が増える可能性がある。

また、その他の問題点としては、「退職金は老後の生活設計上重要な役割があり、前払いして従業員の自己責任で運用するのはリスクがある」ことを指摘する企業が約半数、「人材の流動化が激しくなり、優秀な社員が転職するなどの人材流出の問題が生ずる」ことを懸念する企業が約4割弱を占めている。(図表13参照)確かに、退職金を前払いすることで、短期勤務での退職による経済的不利益がなくなり、長期勤めることへのメリットが薄れ、人材確保のための制度が結果的に従業員の流出につながる可能性もある。また、実務上の問題として、新入社員への適用は容易だが、在籍社員についてはこれまでの積立金の取り扱いをどうするかという問題もある。

13

14

<図表 13 退職金前払い制度の問題点>

こうした問題点はありますが、うまく利用すれば、企業は、退職金を単年度で精算することができ、長期間にわたる退職金支払資金の運用リスクがなくなる。また、従業員のニーズの多様化にも対応できる。今後、税制や社会保障制度面での問題が解決されれば、年金不信が高まっている若年層には、自己都合、会社都合による差が無く、早期に退職金分が支給されるこの制度に対する関心も高まり、普及していくであろう。(図表 14 参照)

14.4

35.8

48.4

69

020406080ニーズが少ない

人材流出が進む自己責任運用はリスクが高い税制等で不利(%)

<図表14退職金制度の見直し>

第3章能力主義のメリット?デメリット

(1)メリット

能力主義の良い点は、第一に、働きに応じた賃金だという点です。賃金の支払いは働きに応じて支給するのが原則であり、公正であるといえます。しかし、現実には、年功序列などの生活保障賃金制度が残っていたり、企業側の理由などから、能力主義により賃金が支払われていない企業が尐なくありません。だからこそ、公正な賃金の支給には、能力主義賃金に切り替えることが、大きな一歩となるでしょう。また、こうすることで、企業の活力が上がり、社員のモラル向上につながるのです。

第二に、これまでの日本の賃金決定の基準であった男女、学歴、年齢、勤続年数などの要素を取りいれない賃金だということです。男女、学歴、勤続年数、のような属人的要素を基準とすることは、賃金の原則から考えても公正とはいえません。能力主義賃金は、こうした属人的要素を考慮しない賃金制度なのです。

第三に、企業業績の向上につながることです。第2章で述べたように、能力主義賃金の能力

15

とは企業貢献度と言いかえられます。社員は賃金を高めるために企業貢献度を高め、それが企業業績の向上をもたらすのです。

(2)デメリット

能力主義賃金は、前述のような長所がありますが、その一方、以下のような短所もあります。第一に、業務の遂行にあたって短期的な成果を追求する傾向を強めてしまうことです。能力主義賃金では、半年ごと、ないし1年ごとに企業業績貢献度を評価して賃金に結びつけます。それにより、長期的な成果を追求すると、短期的には何の成果も生まないとすれば、低い水準になってしまいます。そこで、誰もが、「毎年得られるような成果」を求めることになり、こうした社員の行動は、企業の長期的発展を阻害する可能性があり、企業にとっては必ずしも良いこととは言えません。

第二に、社員間の協力関係を弱めることです。社員の能力(保有能力と発揮能力)で賃金が決まるので、同僚の業績のために協力するよりも、自分の業績のために努力し、集中してしまいがちになります。また、賃金や昇進の面からの社員間のライバル心が強くなり、協力することを怠ってしまう可能性もあります。

第三に、能力主義賃金の推進により、賃金決定で配慮すべき要素の1つである「賃金と生活費のバランス」が崩れる恐れがあることです。社員間の賃金格差は広がり、そのことで会社に不満をもったり、そのことが引き金となって転職を考える人も出てくるでしょう。

第四に、評価制度の問題です。能力主義賃金は、誰もが納得するようなしっかりと明確な評価制度があってこそ成り立つのです。しかしこのような評価制度をつくることは難しく、あいまいなままで能力主義賃金を実行すると、社員とのトラブルや不満を引き起こしてしまいます。

おわりに

私がこれまで述べてきたことを図表15にまとめました。

ここまで述べてきた結果、働く側(雇われる側)からすると、年功序列型と能力主義の組み合わさった形が良いと思われます。若いうちは、能力主義賃金を支払われることで、仕事に対する意欲も増し、転職に対する不安も軽減されます。そして、年を重ねることで、年功序列型の加算をしていく。こうすることで、いろいろな可能性にも挑戦でき、自分なりの生き方をする人が増えるでしょう。そして、年功序列型の何らかの加算をすることで、将来に対する不安を取り除き、家族に安心を与えることができます。これは、あくまで働く側(雇われる側)に立った考えで、企業にとってもよいのかは、企業それぞれの考え方や方針によって違うと思います。しかし、両方組み込むことが、社会全体で考えると、活性化し、賃金に対しての安定を供給できると思います。

いずれにしても、大事なのは、企業それぞれが、労働者に賃金に関してわかりやすく明確に示すこと、そして労働者は自分なりの考えをしっかりと持ち、選択することではないでしょうか。

2月17日新聞で、東京電力は、若手社員の転職を支援するため、特別休職や割増退職金制度を新設することで労働組合と合意したことを明らかにした。対象は入社3年以上の29歳以上で、中高年ばかりでなく全社的に雇用流動化を促がし合理化を進めることになり、3月1日か

16

ら実施される。

私は、このようにさまざまな制度ができ、企業、労働者ともに選択肢が広がることを願いつつ、論文の締めくくりとさせていただきます。

<図表15雇用システムの変化>

17

?参考文献

1、賃金決定の手引笹島芳雄著日経新聞社1995年

2、能力給?年俸制のしくみがわかる本荒木浩二著大和出版1999年

3、能力主義賃金の決め方笹島芳雄著かんき出版1996年

4、賃金?退職金制度研究会報告書

5、第一勧銀総合研究所ホームページ

6、各社新聞

?謝辞

この論文を書くにあたって、なかなか題材の決まらない私に相談に乗ってくださり、提出も気長に待って下さった高井徹雄教授に心から感謝しています。ありがとうございました。

18

19

本文来源:https://www.bwwdw.com/article/7kde.html

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